2021 AUTUMN

はじまりめぐり
−Vol.3 3つの発明−
ホテルニューグランド〜横浜〜

はじまりめぐり
シーフードドリア税込2,783円(サービス料込) ※現在は「シーフードドリア」の名称で提供されています。

お客様への気遣いから生まれたドリア

1927年に開業し、横浜の歴史を見守り続けてきたホテルニューグランド。実は、おなじみの3つの美味が生まれた場所でもあります。今回は、その伝統を受け継ぐ5代目総料理長である宇佐神茂さんと、広報の横山ひとみさんにお話を伺いました。
1つ目は、グラタンとライスを組み合わせたドリア。生みの親は、初代総料理長のサリー・ワイル氏です。「彼は初めてア・ラ・カルト(一品料理)を取り入れ、それまでのコース料理が主流だったホテルレストランに、自由な風をもたらしました。『コック長はメニュー外のいかなる料理にもご用命に応じます』とメニューに記し、お客様のご要望に合わせていろんな料理を出していたそうです。」
ある時、体調を崩したお客様の「何かのど越しの良いものを」というご要望を受け、ワイル氏は即興で創作した一皿をお出ししました。これがバターライスに小エビのクリーム煮とグラタンソースをかけて焼きあげたドリアで、やがてホテルの名物料理となりました。なめらかな舌ざわりにするために布で丁寧に濾すのが、ワイル氏のこだわり。その優しさと伝統の技は、約90年を経た今も受け継がれています。

洋食文化を横浜から全国へ

開業当時の全景

ワイル氏は洗練されたフランス料理の味とお客様が主役のサービスを、日本に伝えてくれました。「ワイルは料理だけでなく、働く姿勢や衛生観念も大切にしました。彼が育てた弟子の多くは、日本各地のホテルやレストランで料理長として活躍していました。」と宇佐神さん。
ホテルの雰囲気にも、そんなスピリットが息づいています。伝統のヨーロッパスタイルを貫きながら、親しみやすく心をほっと和ませる佇まい。かつて名優チャップリンやマッカーサー元帥も訪れたホテルは、横浜のシンボルとして愛され続けています。

創意工夫が詰まったナポリタン

スパゲッティ ナポリタン 税込2,178円(サービス料込)

第二次世界大戦後、ホテルは米国GHQ将校の宿舎として接収されていました。スパゲッティ ナポリタンは、その時に誕生したメニューです。茹でたスパゲティをトマトケチャップと和えて将校たちが食べていたことを知り、「それでは味気ない」と当時の2代目総料理長の入江茂忠氏が、フレッシュのトマトや水煮のトマト、トマトペーストで作ったソースをあみだし、一品料理として完成させました。玉ねぎのみじん切りをじっくり丁寧に炒めた時に出るコクと旨みが、ソースに深みを与えています。シェフの創意工夫と思いやりが生んだおいしさは、やがて全国に広がり、洋食の人気メニューとして広く愛され続けています。

将校夫人を笑顔にした名物デザート

プリン ア ラ モード 税込1,633円(サービス料込)

ナポリタンと時を同じくして、プリン ア ラ モードも「ホテルに宿泊していた将校夫人に喜ばれるものを」との思いから生まれました。当時は贅沢品だったアイスクリームとプリンに、色とりどりのフルーツを添えて。「横長の器に盛りつけた美しいデザートに、夫人たちの気持ちも華やいだことでしょう。」と横山さん。

現在、5代目総料理長を務める宇佐神さんが、「先人が遺してくれた技と味を後世に伝え、日本中で愛される3つの味を、今まで以上に人気メニューとなるよう努めるのが私の使命です。」とお話しくださったように、歴代シェフが大切に受け継いできたのは、きっと優しさという伝統。だから、いつでも何度でもおいしくて、私たちを幸せにしてくれるのかもしれません。

サリー・ワイルと弟子たち

ホテルニューグランド

神奈川県横浜市中区山下町10番地
TEL.045-681-1841(代)
https://www.hotel-newgrand.co.jp/
●コーヒーハウス「ザ・カフェ」(本館1階)
営業時間/10:00~21:30(L.O.21:00
コースのラストオーダーは20:30)
※当面の間は10:00~21:00(L.O.20:00)
※事情により、営業日・時間等が変更となる場合がございます。休館日/月曜日(祝日・振替休日の場合は直後の平日)

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