2021 AUTUMN

土味のある風景三重・伊賀焼の窯元 長谷園(ながたにえん)を訪ねて

呼吸する土鍋

のどかな里山の風景が広がる、三重県伊賀の丸柱地区。長谷園はそこで1832年に創業し、伊賀焼の魅力を発信し続けています。国の登録有形文化財に指定された「母や(おもや)」と呼ばれる風情豊かな空間で、八代目の長谷康弘さんが迎えてくださいました。
長谷園を代表する看板商品といえば、ごはんが炊ける土鍋「かまどさん」。長谷さんによると、伊賀では直火調理に理想的な陶土が採れるのだそう。「太古の昔、琵琶湖は伊賀にありました。湖に生息していた植物や微生物の堆積物が含まれた伊賀の土は、焼くと無数の空気穴ができます。伊賀焼の土鍋は空気穴に熱をしっかり蓄え、食材の芯まで熱をコトコトと伝えます。」
「かまどさん」で炊いたごはんの、ふっくらとおいしいこと! 玄米や炊き込みごはんも大満足の仕上がりです。伊賀の土は木のおひつと同じように呼吸し、ごはんがべとつきません。「炊きあがり時はもちろん、冷めてもおいしいのです。また、火加減が不要で、吹きこぼれがありません。どなたでも失敗なく、おいしく炊いていただけます。」

作り手は真の使い手であれ

長谷製陶株式会社
代表取締役社長 長谷 康弘 さん

長谷園には、昔から伝わる言葉があります。作り手は真の使い手であれ! 「こんなものがほしい」「どうしたら酒が旨く飲めるか」と食いしん坊たちがワイワイ楽しみながら開発した土鍋は、約200種類にも。蒸し鍋にグリル鍋、ユニークなものでは味噌焼き器やアヒージョパンなども揃います。「できたてアツアツのおいしい瞬間、蓋を開けた時の『わあっ!』という感動を、食卓を囲む皆で分かちあいたい。そんな想いが、ものづくりの原点です。」と長谷さん。
「作り手は真の使い手であれ」の精神は、サービスにも。お客様からのご要望で「部品が欠けてしまってどうにか使いたいのだけれど、何とかならないものか」とのお声を多くいただき、パーツ販売を考えたとか。「手間がかかりすぎる」と、社内の反対もありましたが、「うちの土鍋を大事に思ってくださっているからこその声」と周囲を説得。いざ、スタートしてみると想像以上の反響をいただき、長谷園らしいサービスとして知られるようになりました。

歴史と趣を感じる見どころも多数

長谷園の伊賀本店には、土鍋や器の展示ショップをはじめ、伊賀焼の歴史を紹介する資料館、大正建築の旧事務所を活用した休憩所などがあり、見どころ満載の観光スポットとして多くのお客様が訪れます。敷地内には計14件の国登録有形文化財があり、創業当時から昭和40年頃まで使われた登り窯は、16連房という規模では国内唯一の現存登り窯という貴重なものです。
伝統を大切にしながら、今の暮らしに寄り添うものづくりを楽しみながら進化させていく―そんな長谷園の土鍋と器で、おいしい秋を味わいたくなりました。

  • 創業前からかつて代々の当主が暮らし、
    築200年以上を数える日本家屋「母や」。
  • 国登録有形文化財の旧登り窯。
    創業の天保3年(1832年)頃から昭和40年代まで稼働していました。
▼土鍋や器たちがずらり!伊賀本店の展示ショップ「鍋の館」。

▶︎昔の事務所跡や備品をそのまま生かした休憩所「大正館」。コーヒーの自動販売機があり、カップは伊賀焼! 持ち帰ることができます。

伊賀焼窯元 長谷園

●伊賀本店 〒518-1325 三重県伊賀市丸柱569
TEL.0595-44-1511
展示室営業時間/9:00〜17:00
休業日/お盆・年末年始
●東京店 igamono
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿4-11-8 1F
TEL.03-3440-7071
営業時間/11:00〜20:00
定休日/火曜日(GW・お盆・年末年始は休業)
※事情により、営業日・時間等が変更となる場合がございます。
https://www.igamono.co.jp/

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